今日は出発の日だ。この数ヶ月、旅の計画をしながら「出発前はどんな気持ちになるだろうか。」と考えていたが、実際には単なる二日酔いの気分だ。
見送りに来てくれた妻と友人と一緒に、地元札幌から飛行機で福岡、そこからは新幹線では博多-熊本-鹿児島と観光をしながら移動してきた。

8:00にホテルをチェックアウトして路面電車で喫茶店ドルチェに向かう。ドルチェは国道3号線終点に近いモーニングのある喫茶店だ。
コーヒーが出てきてもトーストが出てきても、これから二人としばしのお別れをして長い旅に出るという実感はまだ湧かず、他愛のない話をして過ごした。
旅の出発時刻と決めていた9時が過ぎたことに気づいたが、急いでもいないし名残惜しい気持ちがあったので少し黙っておくことにする。誰かがもう一本タバコを吸えば自分も吸おうと思った。妻が一本吸い始めたので、自分も一本吸うことにする。9:10気は乗らないが「よし、行くか」と声をかけて会計を済ませる。古いテーブルゲームを見つけて二人とそれについて話す。靴の紐を結び直した。
国道3号線起点である照国神社前交差点まで５分ほどの道のりを、西郷隆盛像と写真を撮ったりしながら5分ほど歩いた。
隣接する山下町中央公園には国道起点を示す看板があったので、証拠のようなつもりで写真を撮ってもらい、出発することにする。

9:30「じゃあ、気をつけて」と言って目的地である日置市方面へ、いや、札幌方面へ歩きはじめる。1ブロック先で振り返り手を振る。その20秒後に振り返った時には二人はもういなかった。
Googleマップを見ながら1時間も歩くと市街地を抜け、郊外の景色になってくる。思ったよりも登りが多く、特に鹿児島実業高校を過ぎると地元手稲山のスキー場に向かうような坂道を1時間以上も歩いた。天気は小雨が続く。札幌とは違う景色を間違い探しのように眺めながら足を進める。まだ旅の実感は湧かない。

ようやくきつい坂道を越えるとお昼時。上伊集院駅近くにほっかほっか亭を見つける。のり弁を注文したはいいが、食べる場所がない。進行方向に少し歩くと交差点に腰を下ろせる段差を見つけた。交差点で弁当を食べていると通りがかる車みんなに見られているのがわかる。雨が弱まったので屋根無しでご飯を食べるにはちょうどよかった。キャンプ場に営業しているか・空きがあるか電話をしてみる。問題なさそうだ。
のり弁を食べ終わり残り2時間の道のりを歩く間、午前中には感じなかった足の疲れを感じる。だんだんと雨が大降りになり、目に入ったお宅の軒先をお借りする。軒先を借りるとはこういうことか。
10分ほど待つと雨は弱まり、再び歩き始める。上伊集院の町はそれなりに栄えており、スナックまである。下校中の小学生とすれ違いながら歩く。

15:30予定していたキャンプ場に到着。管理人さんに敷地内のテント区画を案内していただいた末、見晴らしのいいサイトに決定。このサイトは床が板張りになっており、この雨の中でも浸水することはなさそうだ。16:00ごろ設営完了。
設営後、これまで感じたことのない孤独を感じて先が思いやられる。
16:50孤独を紛らわせるためにビールを買いに行く。
今後のゴミなどのために、コンビニのおばちゃんにレジ袋を4枚頼んだ。あまりない注文なのか、少し焦ってサイズと枚数を何度も確認するおばさんとお互い笑う。孤独の中ではその一瞬の会話がすごく楽しい。
コンビニから帰ると、先ほどの管理人さんとはまた違うおじさんに会ったので話をした。北海道から来て旅をしていることを話すと、「山やガーデニングが好きなので、十勝の花を見に行きたいと思っている」とのこと。おじさんの奥さんとも会話をし、一緒に写真を撮った。

雨がパラパラと降り続くのでテントの中でビールを飲んでいると、おじさんの奥さん順子さんがテントの外から「いらっしゃいますか」と声をかけられ、5分程会話を楽しんだ。
テント内でビールをこぼした。マイクロファイバーの雑巾があって良かった。
孤独にはビールが効く。もう一本買いに行く。
お湯を沸かし、カレーメシのシーフード味を食べる。友人がおすすめしていたものだ。しっかりとしょっぱく、スパイス感があって美味しい。
テントの外で暗闇を眺めていると、猪の子供が来た。どこから来たのかわからないが、2-3mに接近したところでお互いに気づき、猪はビクッとして走り去っていった。自分もビクッとした。
妻と電話して寝ることにする。妻は無事に札幌に帰れたことと、機嫌は悪いことがわかった。

食事

見つけたもの